サテ/Sate

サテ屋 Bandung_West Java, 2017

さて、サテのお話を。

…すみません。

サテ/Sateは、日本のエスニックレストランとかでもありそうですね。
インドネシアごはんの中でも、とてもポピュラーな料理です。
インドネシア国内でも、だいたいどこに行ってもサテの屋台を目にしますし、みんな大好き。
夕暮れ時の住宅街で、サテを焼く煙がもくもくとしているのを見るのも雰囲気があっていいものです。

通りのサテ屋 Jakarta, 2016

サテとはつまり、串焼きの肉のことです。

ヤギのサテ Jogjakarta_Central Java, 2017

そのルーツは、アラブにあると言われます。そう、シシケバブのあの流れです。

肉を串に刺して焼くその調理法が、アラブからインド南部を経由しインドネシアに入って来た。
というのが、一般的に言われている説です。
サテに使われる肉が、ヤギや牛などムスリムの食材と合致していることからもうかがえます。

サテ屋のヤギ肉 Bandung_West Java, 2017

ただ、インドネシア、特にジャワの人たちはそれほど頻繁に牛やヤギの肉を消費していた訳ではなく、
市井の人々が最も日常的に口にしていた肉と言えば、鶏。
インドネシアにサテが広まっていく中で、サテ・アヤム、つまり鶏サテが生まれ、定着していきました。
今では、ジャワでサテと言えば「鶏かヤギか牛」というくらいベーシックなものになっています。

サテの名は、タミル語で「新鮮さ」を意味するSathaiに由来します。

と、本では読んだのですが。
オンラインのタミル-英語辞書ではSathaiという単語、出て来ませんけど。
ホントは何語なんでしょう??

牛のサテ Wonosobo_Central Java, 2017

一方で、タミル語ではなく中国語だと言う説もあります。
「三片の肉」を意味するSa tae bakが語源であると。

また一方で、バリの伝統儀式においてサテが重要な一皿であることは古文書に記載されているそうで、
じゃあ、やっぱりサテはインド経由アラブから伝来する前にもうインドネシアにあったのではないか、
という話しもまた、あるにはあるようなのですが、それに対しては、
バリのサテはひき肉を使うので、肉の串焼きとはまた違う由来なのではないか、という意見もある様子。

つまり、サテの由来は、イマイチよく分からない。ということですね。

ただ、少なくとも現代では、串に刺して炭火調理されたものはいずれもサテと呼ばれ、
鶏肉、牛肉、ヤギ肉、豚肉、魚肉、玉子、貝、その他、いろんな種類のサテがあります。

ということで、ざっと、美味しいサテの色々を。

まずは東ジャワ、マドゥラ島のサテ・マドゥラ/Sate Madura。

サテ・アヤム・マドゥラ Samarinda_East Kalimantan, 2016

一番ベーシックな、サテらしいサテと言えば、このサテ・マドゥラな気がします。
鶏もしくはヤギ肉を焼いて、ピーナッツソースとケチャップ・マニスをかけて食べるのが特徴。
ジャワでサテと言えば、基本的にはこのピーナッツソースをつかったものです。
丸みのあるコクが、淡白な鶏肉、しっかり肉の味がするヤギ肉、そのどちらにもよく合うのです。

上の写真は、カリマンタンで食べた時のものですが、
サテ・マドゥラの屋台は、インドネシアどこに行っても、たいがい目にするような気がします。

ピーナッツソース Bandung_West Java, 2017

そんなジャワのサテの特徴のピーナッツソースですが、別添えで来る場合もあります。

そして、シャロットとフレッシュチリの刻んだものを混ぜたケチャップ・マニスも定番。

ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2017

ここで使うフレッシュチリは一番辛い小粒の唐辛子。香りがぱっと立つ青いものが美味しいです。
肉の味+ピーナッツのコク+ケチャップの甘み+クリアな辛味、というこの組み合わせはクセになります。

ここのお店では、ピーナッツソースを焼く前にざっとつけていました。

牛のサテ Bandung_West Java, 2017

こうして焼かれ、上掛けのピーナッツソースは別添えで出されるので、味わい方は自分好みに調整できるのです。

牛のサテ Bandung_West Java, 2017

ジャワのサテの基本形がこのピーナッツソースのサテだとしたら、
西スマトラのサテの基本形は、サテ・パダン/Sate Padangと呼ばれる、カレーソースがかかった牛のサテ。

サテ・パダン Jakarta, 2017

ジャワのサテより小振りの肉を炙り、ライスケーキに添え、各種スパイスを合わせて作ったソースをかける。
このソース、とろみ具合といい、日本のカレーによく似ています。

サテ・パダン Jakarta, 2016

西スマトラは、サテに限らず香辛料の使い方などインドからの影響がかなり強く見える土地。
そんな土地ならではの、とても特徴的な一皿が、このサテ・パダンです。

一方で、先に少し触れたバリのサテ。ひき肉にココナッツを混ぜたサテ・リリッ/Sate Lilit。

ナシ・チャンプル Denpasar_Bali, 2016

なんかちゃんとした写真が見つからなかったのですが、この一番手前のつくね串状のものがサテ・リリッです。
魚の身を使うことが多いのも特徴(鶏や豚などももちろんあります)で、
ハーブやスパイスなどを混ぜ込み、通常のサテの串より太い竹の串を用いて焼きます。
この串が、レモングラスの軸になることもあるのが、また素敵。

華人の食堂でたまに出会う豚肉のサテも美味しいです。

豚のサテ Bandung_West Java, 2017

ピーナッツソースでもスパイシーなタレでもなく、甘めのタレで下味をつけたもの。
その糖分のお陰でかりっとした焦げが出来て、その香ばしさと食感がいいアクセントになります。

また、先日中部ジャワで食べたヤギのサテも、素晴らしく美味しかったのでした。

サテ・クラタッ Jogjakarta_Central Java, 2017

ジョグジャカルタ名物と言われる、若いヤギ肉を塩と胡椒の下味だけで焼いたこのサテ。
サテ・クラタッ/Sate Klatakと呼ばれ、普通のサテよりずっとボリュームがあります。
その大きめな肉にきちんと熱を通すために、
通常は竹串を使うところ、金属の串(自転車のスポークだと言います)を使っているのが特徴。

サテ・クラタッ Jogjakarta_Central Java, 2017

普通、ヤギ肉と言えば臭みがあると言われ、その臭みを消すのに香辛料を使ったりするものなのですが、
ここのサテは、若いヤギ肉だからなのか、最小限の味付けにも関わらず臭みは全く感じず、
肉そのものの美味しさを味わえます。

ちなみに、クラタッとは、サテを焼いている時にたつ音から由来した名前なのだそうです。

サテ・クラタッ Jogjakarta_Central Java, 2017

(あれ、手前の串は竹串だ……汗)

もうひとつ、シンプルな味付けと言えば。
去年の終わり頃から今年にかけて、ジャカルタで急激にはやり始めたサテがあります。
その名も、サテ・タイチャン/Sate Taichan。

サテ・タイチャン Jakarta, 2017

塩胡椒のみで焼いたサテ・アヤムに、ライムとフレッシュチリのサンバル。それが基本形のようです。
店によっては、チキンスープの素をサラダ油に混ぜたものをかけたりもします。
シンプルで、スパンと辛くて、もう確実に美味しいタイプのサテです。
なんでも、このサテ、あるサテ屋で日本人が塩焼きでオーダー(つまりは日本の焼き鳥風)したのが発祥とか。
まさに日本人好みのこの味付け、そのオーダーした人の名前をとってタイチャンと名付けられ、
発端の南ジャカルタから一気にブームは広がり、最近ではここバンドンでも目にするようになりました。

この他にも、色んな種類のサテがあります。
例えば先日スープのことを書いた際に使った↓の写真。

ソトのトッピング色々 Jogjakarta_Central Java, 2017

この右側のは、鳥皮のサテと、ウズラの玉子のサテですね。

また、昨年フローレス島に行った際に、海辺の村で食べたのは、イカのサテ。

イカのサテ Flores_East Nusa Tenggara, 2016

串に刺して炙り焼きにしたら、それはもうサテなのです。
まだまだ、食べたことのないご当地サテも、きっと色々あるのだと思います。
(つゆだくサテ、みたいなものをどこかで目にしたこともありますし)

サテ・パダン Jakarta, 2016

インドネシアのひとたちの、その日常の中にすっかり馴染んでいるサテ。
住宅地に、オフィス街に、駅やターミナルなどの人が集まるところに、
食堂であったり、小さな屋台であったりのサテ屋は必ずと言っていいほどあります。
ぱたぱたと炭を扇いで火を熾し、じゅうじゅうと肉を炙り、もくもくと煙をあげているのです。

そんなサテのお話の最後に、大阪の国立民俗学博物館に収蔵されているサテの屋台を。

サテの屋台 大阪 国立民俗学博物館蔵
サテの屋台 大阪 国立民俗学博物館蔵

サテの屋台 大阪 国立民俗学博物館蔵

船の形してるんですよ。
実際に街で目にしたことはないのですが、かわいいですよね。


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