テンペ/Tempe

テンペ

テンペ、食べたことはありますか?

テンペ/Tempeはインドネシア発祥の大豆の発酵食品で、最近では日本でも売られていたりしますよね。
英語だとTempehになります。最後の「h」はどこからきたのか、ちょっと謎です。

全体を真っ白に覆っているのはカビ(クモノスカビ)の菌糸。
アジア各地に大豆発酵食品は色々ありますが、
その中で塩を含まないものは、納豆とテンペくらいしかないのだそうです。
若干の風味はあるものの、例えば納豆のような個性的な香りがあるわけではなく、
いたって食べやすいのではないかと思います。
発酵を経ているため消化吸収がよく、インドネシア、特にジャワ島の食卓には欠かせません。

市場で売られているテンペ。手に取ると、ぽかぽかです。
発酵プロセスが続いているので、熱を持っているんですね。

市場のテンペ Bandung_West Java, 2016

テンペの起源は不明な点が多く、いつ頃から作られ始めたのか正確なところは分かっていません。
16世紀にはテンペの原型はあったのではないかという説もありますし、
18世紀頃から食べられ始めたのではないかという説もあります。
当初、テンペは黒大豆で作られていたのではないかという説もあり、
そうだとすると、なんだかパンダみたいな白黒のビジュアルだったということになりますね。

いずれにしても、発祥はジャワ島中部のジョクジャカルタからソロ辺り(↓赤丸)ではないかと言われています。



その後、ジャワ人がインドネシア各地に移住する過程で、テンペもその先々へ持ち込まれました。
今でも伝統料理の中でテンペを用いるのは、ほとんどがジャワ島(及び出身)の人々ではないでしょうか。

「テンペ」という名前は、
サグ椰子の粉で作られた白い食べ物の名称であった古いジャワ語「トゥンピ/Tumpi」から来ているという説と、
発酵食品をさす「タペ/Tape」が変化したものではないかという説があるようです。

テンペの作り方はシンプルで、
浸水した大豆の皮を除いて加熱し、あら熱をとったところに菌を植え付けて、
バナナの葉や小さく穴をあけたビニール袋に詰めたら約2日寝かせて出来上がりです。
菌は元々、ワル(ハイビスカスの一種)やチークの葉から採れるものだったそうですが、
今は粉末状の菌が市販されているのでそれを使うのが一般的です。
黒く見える部分があったら、それは胞子が出てきている状態。味は落ちます。鮮度が大事ですね。

大豆をごろっと使うのが一般的なテンペですが、他にも、
豆腐を作った後のおからを使ったテンペ・ゲンブス/Tempe Gembus、
ネムノキの実ラントロを使ったテンペ・ラントロ/Tempe Lantoro、
コロ豆を使ったテンペ・コロ/Tempe Koro、
油を搾った後のピーナッツのおからを使ったテンペ・ブンクル/Tempe Bungkulがあります。

テンペとオンチョン Bandung_West Java, 2016

ちなみに、市場のテンペ売り場ではよく一緒に売られているオレンジがかったカビのもの。
テンペ以上に見事なカビっぷりに驚きますが、
特に西ジャワ地方で好まれるオンチョン/Oncomと言う、おからにアカパンカビをつけて発酵させたものです。
油で揚げたり、サンバルに使ったりされます。

テンペに話しを戻して、その食べ方ですが、生食はせず、加熱調理されるのが基本です。

売られているテンペの形状は、バナナの葉もしくはビニール袋に入った長方形のものが主ですが、
他にも、調理法に合わせていくつかのバリエーションがあります。

テンペ色々

真ん中のものが基本形。
左側の薄いテンペは、中部ジャワ名物のテンペ・ムンドアン/Tempe Mendoanという、
調味料を混ぜた衣をつけて揚げた、天ぷらのようなテンペ料理用のもの。
一包み一枚に見えますが、実は真ん中にバナナの葉が挟まっているのでこれで2枚入り。
とても薄くぺらんとしたテンペです。
右の三角のテンペは、中部ジャワでよく食べられるテンペ・バチャム/Tempe Bacem用のもの。
バチャムは豆腐でも作られますが、濃い茶色をして甘みの強い煮込み料理です。

おかずとしてだけでなく、スナックにもなるテンペ。
薄く薄く切ったテンペを味付けて揚げたクリピック・テンペ/Keripik Tempeは、
パリパリとした歯ごたえが美味しいチップスです。

クリピック・テンペ

ジャワ島に暮らしている者にとっては、もうすっかり日常に馴染んでいる感のあるテンペ。
わたしも大好きです。追々、食べ方も紹介していきますね。





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