ジャグン・ボセ/Jagung Bose

ジャグン・ボセ Bandung_West Java, 2017

トウモロコシのお粥です。

ジャグンはインドネシア語でトウモロコシのこと。
東ヌサトゥンガラ州からの最後のごはんは、ジャグン・ボセというお粥です。

市場のトウモロコシ Rote_East Nusa Tenggara, 2016

インドネシア、実はトウモロコシの生産量が結構あります。
データによると、世界で8位くらいの生産量とか。

とは言え、こういうデータに載ってくる数字が果たしてどこまで正確なのかというのが怪しいものインドネシア。
なので、まあその前後と思って、世界10位以内というくらいでしょうか。
ASEAN諸国の中では第一位のようです。

インドネシア国内でのトウモロコシ栽培地を見ると、最大は東ジャワ。
そして、中部ジャワ、南スラウェシ、南スマトラ、北スマトラ、あたりが主力となるようです。
東ヌサトゥンガラは量ではこれらの地域には及びません。

市場のトウモロコシ Rote_East Nusa Tenggara, 2016

ただ、これら規模の大きな産地で作られるトウモロコシの大部分は、飼料としてのトウモロコシ。
実際、大規模畜産もこれらの地域に多く集り、それはやはりトウモロコシを当て込んでのことだと思われます。
(とはいえ、東ジャワ料理にもトウモロコシご飯とかあるのですが)
食料としてのトウモロコシの消費量、という観点に切り替えると、
東ヌサトゥンガラ州(の、特に農村部)は、インドネシア有数のトウモロコシ消費地域となります。

東ヌサトゥンガラ州は、多少の地域差はあるものの、乾燥がちの痩せた土質の島々が多く、
米などの作物栽培可能な期間は雨季の3-4ヶ月間だけ、という地域も少なくありません。
そういう環境下にあって、稲ほどの多くの水量や灌漑が必要でなく、
その短期間に収穫可能なトウモロコシというのは非常に条件に合った作物。
今回訪れたのがちょうど雨が降り始めた季節だったこともあり、
畑のみならず家々の庭にも、沢山のトウモロコシの苗が植えられていました。

市場のトウモロコシ Rote_East Nusa Tenggara, 2016

野菜としてのトウモロコシではなく、主食としてのトウモロコシ。
おやつにも、潰したトウモロコシのチップスや、ポップコーンなどが出てきたりします。

市場にも、乾燥させたトウモロコシがずらっと。
その中で、白い実に赤い豆を混ぜて売られているのがありました。
おばちゃんに「これは?」と聞くと「ジャグン・ボセ」との答え。
「ジャグン・ボセって?」「ジャグン・ボセはジャグン・ボセなのよ」としか返ってきません。
むう。

とりあえず、1カップ分買ってみることに。そして、後から検索。
白いのは脱穀しているから。お粥のようにして食べるらしい、と判明しました。

市場のトウモロコシ Rote_East Nusa Tenggara, 2016

と、クパンで泊まっていた宿のママがジャグン・ボセを作れる、との朗報。
結局、滞在中は、忙しかったり雨が降ったり(地面も薪も濡れてしまって)で作ってはもらえなかったのですが、
作り方を教えてもらってきて、バンドンのわが家で挑戦しました。

ジャグン・ボセ Bandung_West Java, 2017

ママのアドバイスは以下の通り。
- たっぷりの水で柔らかくなるまでじっくり煮ること。
- 浸水はしない(した方が早く煮えるけどね、美味しさが逃げちゃうの。とのこと)。
- 一緒に炊くのはカチャン・ナシ/Kacang Nasi。

カチャン・ナシとは。ナシはインドネシア語で「ごはん」を意味するんです。
ごはん豆?
調べてみると、確かにライスビーン/Ricebeanという名の豆。日本語ではツルアズキと言うそうです。

ということで、いざ。分量なしのレシピもせっかくなので(レシピってほどのものですらないのだけど)。

【ジャグン・ボセ】
脱穀した干しトウモロコシ
ツルアズキ

ココナッツミルク


1.煮る
たっぷりの水を湧かし、トウモロコシとツルアズキを煮る。
弱火でじっくり、柔らかくなるまで。途中、水分が少なくなってきたら随時適量を足す。

2.味付け
ココナッツミルクと塩を加えて、味を整える。
出来上がり。

検索すると、ターメリックを使ったものや、カボチャを入れるもの、豆の種類が多いもの、あるのですが、
ママの教えの通りの一番シンプルな作り方でやりました。
(「そのものの味があるから塩はなくてもいいわよ」とすら言いましたからね、ママ)
ジャワで豆のお粥というと、甘く煮た緑豆のものが一般的で、
なので、どうにも砂糖やシナモンやパンダンリーフなどを入れたくなってしまうのですが、耐えました。

ジャグン・ボセ Bandung_West Java, 2017

食べてみます。
トウモロコシは、いわゆるスイートコーンのようなものではなく、もっと粘度の高い品種です。
ココナッツミルクが入っているとは言え、噛めばトウモロコシの味と豆の味。
素朴な味。
まあ、例えば毎日の朝ご飯として食べるものだと考えたら、このくらいシンプルでちょうどいいのかも、とも。

で、出来上がったところで、クパンのTに「これで合ってるんだろうか」と写真を送ってみました。
(写真では味は分からないんだから、あんまり意味はないのかもしれないんですが)
で、このボウルの半分ほど食べたところで、Tから返信が。
「潰した唐辛子とクマンギとライムと塩のシンプルなサンバルで食べるのが好き」
とのこと。

即作りました。

シンプルサンバル Bandung_West Java, 2017

唐辛子は赤く熟れたチャベ・ラウィットを。他は目分量で適当に。
そして、このサンバルを加えて、再びジャグン・ボセ。

美味しくって、思わず声を出して笑ってしまった。

素朴で地味だったトウモロコシのお粥が、唐辛子と塩によって締まりがでて、クマンギとライムで爽やかに。
素晴らしいですね、このシンプルなサンバル。ついおかわりしてしまいました。

こうなると、俄然また作りたくなります。
でも、脱穀したトウモロコシが果たしてバンドンで手に入るのかが問題です。
普通の乾燥トウモロコシを買って、自力で脱穀ってできるものなのかどうか。悩ましい。

ジャグン・ボセ Bandung_West Java, 2017

インドネシアの東側、特にヌサトゥンガラ諸島界隈には、
例えばジャワやスマトラにあるような食文化は、あまり期待していなかったんです、実は。
これまでも東ヌサトゥンガラ州には何度も足を運んでいて、土地として大好きなのですが、
その際に食べた食事の印象がそう思わせていたのでしょうね。
反省します。
確かに、他の地域のように多種多様のスパイスや食材を使う訳でもなく調理方法も至ってシンプルなのですが、
それがここの土地の食事の魅力なのだなと、気づきました。
また今度行く時には、どこかのお宅のキッチンに入り浸ってあれこれ教えてもらいたいなと思います。


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