バンガイ諸島の食卓⑥

サランガル Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

島の食卓の、主食のお話を少し。

今でこそ、基本の主食は白米となっていますが、バンガイ諸島は元々稲作の難しい土地です。
一番大きい島の内陸に、ごくごくわずかな面積の水田を目にしましたが、到底地域を賄えるものではなく、
基本的に、米は地域外からの「輸入」となっています。

で、米食が一般化する以前のバンガイ地域のひとたちの主食はなんだったのか。
答えは「芋」なんですね。

ウビ・バンガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

現代の食卓においても、芋はとても大事な存在。

キャッサバ、タロなども並ぶ市場ですが、その中で抜群の存在感を見せていたのがこの大きなずんぐりした芋。
ウビ・バンガイ/Ubi Banggaiと呼ばれる芋です。
バンガイ諸島でしか目にしない品種らしく、遠くマルク地方まで出荷されたりするのだそうです。

ウビ・バンガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

丸みがあって、キャッサバやタロよりずっとなめらかな肌をした芋。

町のお母さんに、主食としてのウビ・バンガイ料理、サランガル/Salanggarを作ってもらいました。

ウビ・バンガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

シャリシャリと外皮をむくと、真っ白で少しぬめりのある身が。
生で齧ってみたところ、ぬめりとシャキシャキした歯ごたえは長芋にも少し似た感じです。

皮を剥いたら、大きめに切り分けます。

ウビ・バンガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

やっぱりまな板は使いません。というか、そもそもないんですけどね。

ウビ・バンガイとロカ・パウ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

で、この日は、ウビ・バンガイと一緒に、ロカ・パウ/Loka Pauと呼ばれる青バナナも入れてくれました。

ロカ・パウもバンガイ地域特有の品種なのだそうで、青い状態で市場に並んでいました。
以前、バナナの話しでも書きましたが、とにかく、バナナの種類が多すぎるんです。
そして、みんな、バナナのことに細かすぎる(笑)。
あのバナナはどうだ、このバナナなはこうだ、それぞれ一家言持っているんですよ。
わたしにしたら「みんなだいたい同じ感じのバナナ!」なんですけどね。

ロカ・パウ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

とは言え、バナナチップス以外で、青バナナを調理するところをみたことがなかったので、いい機会でした。

ロカ/Lokaとは、バンガイの言葉でバナナという意味なんだそうです。
加熱した青いロカ・パオは微かにバナナらしい酸味をもちつつ、確かに芋に似た存在になります。

ロカ・パウ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ということで、あとでおやつにする分も含めて2房買って来たのでした。

これもしっかりと皮を剥いて、食べやすい大きさに切ります。

ロカ・パウ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

続いて、ココナッツミルクを準備。
たっぷり使います。

ココナッツミルク Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

熟れたココナッツの白い果肉を削り、そこに水を加えてよく揉み出したものがココナッツミルクです。

これを、さきほどのウビ・バンガイとロカ・パオに加え、砂糖適量と塩少々で煮込みます。

サランガル Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ぶくぶく煮えてきて、アクが出てきますが、ええ、ここでもアクはとらずにそのままです。

サランガル Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

柔らかく煮える頃には、ブクブクしていたアクもどこかに消えて。というか、同化して。

サランガル Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

煮上がったウビ・バンガイは親芋のような感じ。
ココナッツミルクが程よく味に深みを出していて、美味しいです。
これに、魚のスープなどをかけていただきます。

村のお母さんは、サランガルではなく、単に塩水で煮たウビ・バンガイを出してくれました。

茹でウビ・バンガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

これも、美味しいです。飽きがこない、いかにも主食にふさわしい食べ物ですね。

もう一つ、芋類を使った主食枠の食べ物として、シノレ/Sinoleというのがあります。
村のお母さんが作ってくれました。

シノレ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

南スラウェシなどでシノレというと、サゴヤシの澱粉とココナッツを合わせたものを指すようですが、
ここバンガイ諸島では、キャッサバを使います。
バンガイの言葉で、シノレはソレ/Soleと呼ばれるそう。すり下ろす、という意味だそうです。

キャッサバをすり下ろして作るものとして、
以前、南東スラウェシの島々で食べられているカスアミについて書きましたが、
シノレは蒸すのではなく、鍋で炒るようにして火を通すのが特徴です。
キャッサバをすり下ろし、水分を絞って、一旦天日干しで乾燥させ、
その後、ココナッツと混ぜ合わせたら水適量を加えつつ、鉄鍋で火を通していきます。

シノレ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017 

お母さんのシノレには椰子砂糖が少し足してあり、ほんのりとした甘みと炒ってできる微かな焦げ味が美味。
これは、一度、自分の家でもつくってみたいなと思います。

ちなみに、先のカスアミですが、普通はあれこれ混ぜないようなのですが、
砕いた椰子砂糖を混ぜて作った「ククス/Kukus」と呼ばれるものもこの地域で目にしました。

さて、最後に、主食ではないですが、おやつ枠で。
揚げウビ・バンガイと、揚げロカ・パウ。

揚げウビ・バンガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017 

外側カリカリ、中ホクホク。ああこれは危険。

揚げウビ・バンガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017 

添えているのは、トラシを使ったダブダブ(バンガイではサンバル全般をダブダブと呼びます)
唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、トラシを炒めて、塩を加えつつ潰していったもの。

そして、揚げロカ・パウ。
まず、皮を剥いたものを、適当な厚みにスライスします。

ロカ・パウ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

3枚くらいですかね。

そして、油でじゅーーー。

揚げロカ・パウ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

きつね色になるまで揚げていきます。
ちなみに、お母さんは「赤くなるまで」と言いました。表現も色いろ。

揚げロカ・パウ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

赤く揚げ上がった青いロカ・パウ。

これにつけたダブダブ(サンバル)がまた美味しかったのです。
ピーナッツを使ったダブダブ・カチャン。

ダブダブ・カチャン Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、塩に、揚げピーナッツを加えてなめらかに潰します。

それを、油で炒めていきます。

ダブダブ・カチャン Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

じゅーーー。
水分が飛ぶまで、気長に。

ダブダブ・カチャン Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ほら、美味しそう。

ダブダブ・カチャン Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ホクホクの揚げロカ・パウに辛味の効いたダブダブ。止まらない、止まらない。

これもまた、自分で作ってみますね。

ウビ・バンガイは4玉ほど買って、バンドンのわが家に持ち帰ってきました。試しに植えてみます。
とりあえず、今夜はウビ・バンガイを入れた豚汁を作ってみるつもりでいるのです。


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