バンガイ諸島の食卓③

市場の鮮魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

島の食卓、その3。今日は焼き/揚げ魚です。
とてもベーシックな料理ですし、味付けも本当にシンプル。
その分、この「鮮度ではどこにも負けないよ」という島の魚たちだからこその美味しさを堪能しました。

焼き魚下味 Banggai_Central Sulawesi, 2017

町のお母さんの焼き魚。まずは下味をつけています。

焼き魚用ブンブ Banggai_Central Sulawesi, 2017

ブンブは、唐辛子、バワン・メラ、トマト、塩、粉末ターメリック、そしてレモン・チュイ。
これを潰して混ぜたものを、きれいに洗って身に包丁を入れた魚にすり込んでいきます。

焼き魚下味 Banggai_Central Sulawesi, 2017

あとは、焼くだけ。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

一方、冒頭の写真の魚は揚げてもらいました。

焼き魚のことは、イカン・バカール/Ikan Bakarと言いますが、
揚げ魚は、イカン・ゴレン/Ikan Goreng。
この日、お母さんが作ってくれたのは、イカン・ゴレン・リチャ。

リチャ/Ricaは唐辛子を使ったソースのことです。

唐辛子 Banggai_Central Sulawesi, 2017

正しくは、リチャ・リチャ/Rica ricaと2度繰り返すこのソースは、北スラウェシのものが有名ですが、
中部スラウェシであるバンガイ諸島でも、当たり前のように使われていました。

本場北スラウェシのものは、フレッシュの小粒唐辛子をふんだんに使い、とにかく辛いのです。
(バンガイのリチャ・リチャはだいぶ辛さ控えめです)
そして、このイカン・ゴレン・リチャ(リチャ)のように料理名に使われた場合、
サンバルのように料理の横に添えられて出て来るのではなく、
ソースとして、料理にしっかりかかって出て来る場合が多いのも特徴です。

ちなみに、バンガイでの旅で「サンバル」という言葉は全く聞きませんでした。
料理にかけるソースとして出て来る唐辛子ベースのものは、基本全て、リチャと呼ばれています。
サンバルのような別添えのものは、ダブダブ/Dabu dabu。
また、唐辛子そのもののことも、チャベ/Cabeと言っていたのはわたしだけで、
お母さんたちはリチャ、もしくはロンボッ/Lombokと呼んでいました。所変われば、ですね。

リチャ・リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

ということで、この日のリチャ・リチャ。
唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、塩を油で炒めてから潰したもの。
とてもシンプル。
あわせて、魚もごくごくシンプルに、素揚げ。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これはインドネシア各地共通かもしれないのですが、
チキンであれ魚であれ、揚げるとなったらかなりしっかり水分を飛ばすまで揚げるのが好まれます。
なので、この魚を揚げているときも、
わたしがひっくり返したくてうずうずしているのを、お母さんが「まだ!」と牽制していたりしました。

あ、あと、魚一匹猫にとられたんじゃないかしら!とも騒いでいました(笑。

容疑者↓

島猫 Banggai_Central Sulawesi, 2017

飼ってるわけではないとお母さんは言うのですが、でも普通に台所に出入りしていて、ほぼ飼い猫に見えます。

さて、同じ揚げ魚でも、漁村のお母さんの場合。

仕掛けを引き上げにいく子どもたち Banggai_Central Sulawesi, 2017

まずは、魚の確保から。
夕暮れ時。浅瀬にかけておいた仕掛けを、村のこどもたちが引き上げにいきます。

鮮魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

で、これがかかっていた魚たち。まだぴちぴちと跳ねるのです。

この中から、何匹かいるまだら模様の魚(島ではマレアと呼ばれていた魚)を選びます。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

それを、塩とレモン・チュイで下味をつけて、油で揚げます。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

もちろん、しっかり、かりっと。
見た目は愛想なく見えるかもしれませんが、これがまた美味しかったのです。
「なんでこんなに美味しいんだろう!?」と言うと、お母さん、にやっと笑って、
「別になにも特別なもの使ってないでしょう?鮮度よ、鮮度」と自慢します。

もうひとつ、漁村のお母さんの料理で、その美味しさに翌日もまた作ってもらったものを。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これも「リチャ」なのですが、
魚を食べ終わってお皿に残ったソースだけでも、ごはんにかけてしまいたくなる美味しさ。

リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、塩、まではいつも通りなのですが、

リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

そこにキャンドルナッツを加えるのです。

インドネシアでキャンドルナッツはクミリ/Kemiriと言われ、スープなどを作る際によく使われます。
クセはなく、そのしっかりした脂質から、いいコクがでるのです。

材料をなめらかに潰したら、油を熱し、まずは基本のブンブを香りよく炒めます。
火が通った頃合いに、キャンドルナッツも加え、
少々の水で全体を合わせ、味を整えたら焼き上がった魚にかけて出来上がり。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これは(同じ鮮度はむりでも)美味しそうな魚が手に入ったら、自分でも作ってみたいです。
ごはんが進んでしまって、とても危ないんですが。


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