タウチョ/Tauco

タウチョ(ボトル) Bandung_West Java, 2017

「インドネシアで食される大豆製品は4つの"T"で覚えてください」

以前、仕事でお話をうかがいに言った大学教授の言葉です。
4つの"T"とは
Tahu=豆腐
Tempe=テンペ
Tauge=モヤシ
Tauco=タウチョ
のこと。
(実際はここに、もうひとつ、調味料のケチャップ/Kecapが入るはずですけどね、笑)
この4つ目の「タウチョ」について、今回は。

タウチョは塩分を含む大豆の発酵食品。味噌と同類ですね。
(実際、日本の味噌を説明する際にタウチョに言及する場合が多々あります)
いつ頃からインドネシアで作られ始めたのか、明確なところは分からないようなのですが、
少なくとも300年ほど前までは遡れるのではないかと言われています。
ルーツは中国。黒大豆と黄大豆の違いはありますが、製法等は豆豉に類似します。
現在もタウチョを好んで使用するのは、インドネシアの中でも華人もしくは華人の多い地域の人々。
かつてインドネシアを含む南方諸国との交易の窓口の一つであったと言われる廈門では、
「豆」をTauもしくはToと読むと言われ、タウチョというその名称自体からも由来が伺えます。

作り方は至ってシンプル。
浸水して皮を除いた黄大豆を茹で、水を切って数日ザルに広げ自然に着菌させ、塩水を加えてさらに熟成。
そこに椰子砂糖を加えて加熱したものが液感のあるタウチョ・チャイル(Tauco Cair)、
加糖後に水分を除いて更に天日干ししたものがタウチョ・クリン(Tauco Kering)となります。
この製法が一番ベーシックなものですが、現在は着菌を促す目的で、
大豆を茹でた後に小麦粉やタピオカ粉などを加えたり、テンペ菌を足す場合などもあるようです。

で、冒頭の教授曰く、
タウチョを食する地域というのはかなり限定的で、主に西ジャワ地方で食される、のだそうです。
確かに、西ジャワ州のチアンジュールはタウチョの産地として有名です。
ただ、例えば中部ジャワ北岸のプカロンガンではタウチョを使ったスープが有名ですし、
北スマトラのメダンでも、味付けにタウチョを使った料理が見られます。
なので、確かに豆腐やテンペほど一般的ではないにしても、
インドネシア各地、少なくとも華人の多い地域ではタウチョは食されているのではないでしょうか。
各地のタウチョはそれぞれ風味が異なると言われ、そういうところも、日本の味噌に似ているよな思います。
(元来、環境由来の自然着菌が基本だったので、土地ごとの菌の違いが味の違いにつながったと言われます)

タウチョ(ボトル) Bandung_West Java, 2017

で、タウチョというと真っ先に思いつくのは、この2匹の象印のメダン産のタウチョ。
パケ買いしそうな瓶入りのタウチョ・チャイルです。
原料に、小麦と砂糖が含まれています。

一方で、カゴ状の容器に入っているのは、中部ジャワプカロンガン産のタウチョ。

タウチョ Bandung_West Java, 2017

ずっしり重量感があるカゴですが、中にはビニール袋で2重に包まれたタウチョが。

タウチョ Bandung_West Java, 2017

こちらは、水分のほとんどない、タウチョ・クリン。まあ、ウェットですけど。
このビニールを明けた途端に、なんとも食欲をそそる発酵臭が立ち上り、思わず白ご飯が欲しくなります。

タウチョ・クリン Bandung_West Java, 2017

ほぼ、味噌ですね、このビジュアル。
パッケージの表示を見ると、原料は大豆と塩のみ。砂糖の使用はないようです。
となると、これはもう豆味噌なんではないでしょうか。

ではこのふたつを、食べ比べてみましょう。

と、思ったのですが。
せっかくですから、中国の豆豉も一緒に並べてみようと思いつき、買いにいきました。

豆豉 Bandung_West Java, 2017

豆豉って乾燥させてませんでしたっけ?浜納豆的な?

原料を見ると、黒大豆、塩、砂糖、サラダ油、とあります。「古式製法」とも。
タウチョと同じ製法で作られていると考えましょう。サラダ油は、なんだろう、酸化防止として、ですかね。

ということで、食べ比べ。ついでに買ってきたKOKITAのタウチョも。

豆豉とタウチョ Bandung_West Java, 2017

KOKITAはインドネシアの調味料を幅広くだしている食品メーカーです。
こちらも、小麦粉と砂糖を含みます。

タウチョと豆豉 Bandung_West Java, 2017

右上:豆豉
右下:タウチョ・クリン
左上:象さんのタウチョ・チャイル
左下:KOKITAのタウチョ・チャイル

まずタウチョ・クリンですが、これはやっぱり味噌です。若い味噌(笑)。
納豆に近い発酵臭もいくらかありますが、まろやかなコクなど、「知ってる、この味」となります。
それに対し、象さんのタウチョ・チャイルはシャープな塩気が特徴。
しっかり発酵したことを思わせる旨味があり、塩味が後に残る感じです。
対して、同じタウチョ・チャイルでも、KOKITAのは納豆系の発酵臭が強くなります。
大豆の豆感もしっかり残っているあたりからも、若いんじゃないかなという気が。
そして、豆豉。油がある分、塩分がだいぶマイルドになっている感じですが、
発酵臭は弱くなるものの黒大豆独特の風味があって、タウチョ・クリンよりはクセがあります。
軽めの発酵(納豆臭)→→→しっかり発酵(コク)という流れだとしたら、
KOKITA→象さん→タウチョ・クリン→豆豉、という順番。真ん中ふたつくらいが好きです。

ところで。

タウチョ・クリンがあまりにも味噌っぽいので、試しに味噌ラーメン的なものを作ってみました。

タウチョ・クリンのラーメン Bandung_West Java, 2017

普通に美味しかったです。

「みそ汁」と言ってしまうと若干の違和感が残るかもしれませんが、
Miso Soupと曖昧な表現にしてしまえば、全く問題なく、かつ日本人好みの味になりますね、これ。

タウチョ・クリン Bandung_West Java, 2017

タウチョって、もちろん知っていましたし、タウチョを使った料理を外で食べることもあったのですが、
イマイチ使いこなせる気がしなくて、手を出さずにいました。もったいなかったですね。
これからは色々活用していってみようと思います。

ということで、タウチョを使った美味しいレシピを次回、ご紹介しますね。


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